恋なんだわと自分を悦惚の境地に

聞いていれば、実に、着実に自分の生活を守りながら、女の恋愛、結婚、生活を考えているんだなあ。γシヤ地方に住みついて、自分の目的の語学をこういった正しい規則で自分の生活の尺度を守っている さんが、五年自に、はじめて気付いたことは、次のようなことなんだ。これは、大変、貴重なものだと思うよ。それは、一、日本も外国も、まったく同じこと。だというのと、二、駄目な男は駄目な男。というこ点だというんだなあ。はじめのスベイ γ留学の一年間、 さんはスペインの愛する男と女は、なんて素晴らしいのだろうと思ったそうだよ。どうしてかっていうとね、恋をすると、一日中、じっと抱き合ったり、肩を抱いて、他人のことなんぞは一切気にかけないで散歩しているというのだな。そして、彼は、毎日、彼女の美点をひとつずつ発見していく会話を曜いているというんだ。「昨日のヘアスタイルは、君の優雅さを倍増させたが、今日のヘアスタイルは、君の可憐さを倍にしているよ」といった具合なんだよ。「こういう男性が日本にいますか」さんはいったものさ。ιおれは、「まずいないね。そんな歯の浮くような言葉をいう奴は:::。ところで、それを聞く女性の心情はどういうことなんだね、一体。嬉しいのかね」というと、 さんは徴笑んで、「女って単純だと笑われそうだけど、そういわれると、とても嬉しいんですよ。ほんとに:::。なにか、うっとりしてしまうの」というじゃないか。とくに、日本の女性は、外国語で、こういう内容のことを暁かれると、もう、これこそが愛なんだわ、恋なんだわと自分を悦惚の境地に誘い入れてしまって、まるで映画(洋画)のヒロイ γになったような気分になってしまうそうなんだな。おれは、この気持ちがわからぬではなかったが、なぜか哀しかったなあ。憐れといってもいい気持ちになったもんだ。おれが、そんなことを考えていると、 さんが同じようなことをいったんだト品。「そんなことをいわれて、嬉しがっている女性は、ほんとは憐れなんですよ」。おれは、びっくりして、 さんの顔を見たもんだよ。すると、 さんは、なぜか悲しそうな表情になって、「かつて、あたしも、そんな時期が一時あったんです。言葉だけの偽の恋に酔っ払うといったところがあったんです」というじゃないか。「でも、ある日、こんな言葉は、お互いに、マイナスにこそなれ、プラスにはならないと思いました」「マイナス:::というと:::」「怠け者だから、そんな言葉を使うんです。